
(後編からのつづき)
いよいよ人生の最終戦。定年後の仕事で苦労したMさんはお金に困らない老後を無事に迎えられるのでしょうか。最終章、見ていきましょう。
妻の定年と僕の入院
警備員の仕事を始めてから3年が経った。あぁ、何としたことだろう… 妻にも定年があることを忘れていた。彼女のパートも60歳で勤務終了になってしまった。これは完全に計算外だった。毎月8万円の収入がなくなるということは一気に厳しくなるぞ。
年金まで残り2年。1200万円残るはずの貯金が計算上は1000万円になる。わが家の家計は大丈夫か…
その半年後。今度は僕の体調が悪くなった。以前から患っていた糖尿病がとうとう悪化してしまった。血糖値が恐ろしく高くなっていて、検査後即入院となった。入院期間は14日間程度らしいから、それを勤務先へ伝える。ただ、この警備員の仕事は日給制だから休めば休むほど給料が貰えない。2週間も休むと給料は約半分になる。入院費用もかかるし、給料も減るしで踏んだり蹴ったりだ。やっぱり健康が何よりも財産なんだなってことが分かるよ。
年金受給開始
とうとう65歳になった。待ちに待った年金受給。月間20万円が貰える。
警備員の仕事もまだ続けられるんだが、糖尿病が重いためかどうしても働く気になれない。そうこうしているうちにシフトにも入れてもらえなくなってきた。まぁいい、年金で20万円も貰えるからね。
とはいっても、住宅ローンはあと5年も残っている。毎月15万円とボーナスで20万円ずつ。年間支払額が220万円だ。年金の年間受給額が240万円だから、20万円しか残らない。月にならすと16000円程度。これじゃ、なんの足しにもならないね。
毎月の生活費は18万円だから年間216万円。この内、20万円を年金から充てられるから約200万円を貯金から切り崩していく計算だ。残り5年だから1000万円、貯金も丁度1000万円だからなんとかなるかな。住宅ローンさえ無くなれば家計はプラスになるからね。
[収入]
夫(65歳) | 20万円(年金) |
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妻(62歳) | 0万円 |
[ローン]
住宅ローン (残5年) | 15万円 (ボーナス時加算20万円) |
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自動車 | 0万円 |
[貯金]
毎月 | 0万円 |
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現在の貯蓄額 | 1000万円 |
住宅ローン完済も次なる問題が…
年金を貰い始めてから5年が経った。長く苦しい住宅ローンを完済したぞ。貯金もなくなったけど借金もなくっなった。これからは毎月黒字家計で過ごしていけるよ。本当に肩の荷が下りた。。。
そんなある日、僕の住む地域に台風が直撃した。今までは何事もなくやり過ごせたのに今回に限って窓のサッシから雨漏りを起こしたんだ。この家も築35年になるから、さすがに心配になって工務店を呼んで見てもらったら、窓枠のコーキングが劣化しているそうでコーキングの補修が必要だって。それには足場を組んで工事するんだそうだ。この家も今までロクにメンテナンスしてあげていないから傷んでいるらしい。実際に必要な工事費用を見積もりしてもらったら300万円かかるって。ただ、この歳になって住めなくなったら大変だと思ってリフォームローンを組んで工事してもらうことにした。
老後になってもお金でラクすることはできないのだろうか… ただ、2年前から妻も年金がもらえるようになったから、それでローンの支払いにも目処が立ったよ。
[収入]
夫(70歳) | 20万円(年金) |
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妻(67歳) | 6万円(年金) |
[ローン]
リフォームローン(残5年) | 56000円 |
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[貯金]
現在の貯蓄額 | 30万円 |
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妻が亡くなった…
それから1年後。なんと妻が僕を遺して亡くなった。早い!早すぎる!
僕は彼女に何もしてあげられなかった。。。ちくしょう!
わが家は家系の本家でもなくお墓も持っていないから慌てて作ることにした。それと、葬儀費用も300万円かかった。さらに、亡くなるまでの医療費で100万円くらいかかったんだ。彼女がいなくなるだけでも耐えられないのに、またもお金で苦しい思いになる。
実は、わが家は生命保険と言うものに加入をしていなかったんだ。若い頃は生命保険が怪しい商売に思えて加入しなかったし、年取ってから加入しようとしたときは保険料が高すぎて入れなかったからね。若い頃に最低限でも保険に加入していれば良かったよ。葬儀代はなんとか工面したけど、お墓代はまたもローン。あぁ、僕も早くそちらの世界に行きたいよ…
[収入]
夫(71歳) | 20万円(年金) |
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[ローン]
リフォームローン(残5年) | 56000円 |
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墓石ローン(残3年) | 30000円 |
[貯金]
現在の貯蓄額 | 0万円 |
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いかがでしたでしょうか。
Mさんの現役時代からの半生を追いかけてみました。年収も高く教育資金対策はしっかりしていたにも関わらず、これだけ老後に苦労されたMさんの家計管理はどこが行けなかったんでしょうか。老後のMさんを苦しめたのは「住宅ローン」「自動車ローン」「ボーナス払い」「高齢での無計画な転職」「貯蓄額が少ない」といった現役時代から続く複合的な要因です。どんなに高収入であろうと老後を見据えたライフプランが作れていないと、収入が一気に落ち込む老後にしわ寄せが来てしまいます。一度歯車が狂い始めると老後では立て直せないということが分かる事例ですね。あなたのライフプランを一度見直して無理な計画を立てていないかチェックしてみましょうね。


